アンファッショナブル・ファッション日記 2008年4月

No.6 (2008年4月)

4月某日 <わたし>のマンガ


友人が作画、わたしが原作書いた、ゴシックロリータ漫画が掲載された「架空2号」がエイプリルフールに発行。

これはシリーズで描いていく予定のファッションエッセイマンガで、服飾専門学校に行くお金を貯めるために中古レコード屋でアルバイトしている女の子が主人公。ロリータ服に身を包み、店長からは変な服と言われながらけなげに働く、世界との摩擦を淡々と時にユーモラスに描く、徹底的虚無装飾日常風景。生地を買って服を自作したりもするミチヲの衣装も楽しめる。いま主人公のミチヲが東京行ってひどい目(おかしな目)に会う「なんでやねん」編が出来上がりつつあるところ。

自分の作品以外で雑誌に掲載されているもので好きな作品もある。甲野酉さんの無表情にしかしハードな日常を描くOLマンガ「幸福番外地」に心惹かれる。春の雑草がつけた小さくて可愛い花のような希望に満ちている。吐血ミンチさんの「バイオレンスガール 脳内処理」も、自分のために描かれたマンガのようで、はまりまくる。枕元に置いて何度も繰り返し読む。


4月某日 わたしだって、モンクレール


友人が仕事で神戸に来るという。わたしにとっての永らくの神戸っ子であり続けた人だが、わたしが神戸に引っ越したらすぐに神戸を出てしまい、すれ違い。4月なのにとても寒かったのと、少し風邪気味だったので、子供用のモンクレールのブルゾンを羽織っていたら、「のんちゃん(わたしのこと)、モンクレール!」が、会って第一声だった。

イメージと違うのかなあ。実践しない山登りファッションや下手の横好きスピード狂につきスキーウエアマニアなわたしを知らなかったのか。なかなか服を売ってくれない古着屋で、自分の本と無理矢理交換してもらった戦利品。モンクレールはご存じグルノーブル(スキーで有名なスイスにほど近いフランスの町)発のファッショナブルなブルゾンで人気が定着したブランド。

わたしのはもろスキーウエアっぽい逸品。ずっと壁に飾っていて、入手して一年以上経った春になって初めて着用したが、なかなか気に入った。このモンクレールは日本で流行する以前の旧ロゴで貴重だ。サイトで調べて見ると60年代の頃のデザインに色や素材感が似てる。飲茶をだらだらと頂きながら、昔話にはなかなかならず、現在のお互いの仕事の話などで盛り上がる。


4月某日 垣根のない音楽!


一筆ですごいデザイン仕上げる東京在住の小川さんから、行かなきゃだめ、の連絡もらい、脱臼パンク(小川さん命名)なベルギー実験音楽バンドThe Crappy Mini Bandを見に出掛ける。場所は、大好きな十三という歓楽街のなか。

この町はわたしにとって映画を見たり、ライブを見たり、そしてお菓子を買うところ。いつもここに来た時の定番、下町の洋菓子屋さんで前もって電話で取り置きしてもらってたロールケーキをまず取りに行く。今ロールケーキブームで、ここも例にもれずその波にのまれており、だいぶねばったがたった一つしか売ってくれなかった。わたしは20年くらいここのロールケーキが一番と思って食べ続けてるのだが、どうか早くこのブームが去って欲しいと思う。

ライブはこの下町十三にある銭湯で行われ、12歳以下のキッズは無料らしく、ステージとなる脱衣場は、がきんちょでいっぱい(彼らも驚異のパフォーマーへとやがて変身することになる)。ワインのボトルや手作りのおつまみを持ち込んでほとんど花見状態のサラリーマンやOL風の方もおられたり。すごいことになってる、演奏始まる前からすでに。一緒に行った友人は銭湯マニアなので、雨のなかうまく騙して連れてきた。そのお礼もかねてたったひとつしかない(しつこい!)ロールケーキをお土産に手渡す。

チューバの高岡さんは、ゲストというよりバンマス、面倒見のいいツアーコンダクターみたいだった。no words dayという曲にわたしは感動する。みんなで合唱もする、no words day ー言葉のない日、というサビの歌詞を。子供も大人も、男も女も、サラリーマンもミュージシャンも、わたしもあなたも、言葉のない日、という言葉=歌、が確かにある日。じーんとした。

多ジャンルにまたがり即興のセンスを維持しながら、音作りもそして演奏も安定していてすごく良かった。わたしはライブが終った後、パクヤンさんのトイピアノに触らせてもらった。


4月某日 縁を大切にしよう


最近偶然が多くて、もはや偶然でなくなってきている。それを何と言おうと考える。それは「縁」なのかな。

しばらくお酒を飲んでいないわたしだったが、久しぶりに神戸の呑み友達と会うことになった。駅で待ち合わせしたら、友達が「カルメンマキが今夜これからライブらしい」と言うではないか。わたしを待っているときに偶然駅で会った知人が、一緒に演奏されるピアニストのファンだとかで、今から行くところだという話を聞いたばかりなのだとか。友達はカラオケでわたしにマキ姉の歌を歌わせるのがうまい。わたしはマキ姉の歌ならだいたい何でも歌える。とにかく大好きな歌手なので。寺山修司X田中未知のコンビによる歌など最高。情報聞いて会うなり「えーっ」と駅で絶叫してしまった。

結局いつもの焼き鳥屋へ行くつもりがライブ会場に行ってみようということになった。小さなジャズ喫茶で行われるライブ。店はすでにお客さんでいっぱい。予約してないと席はないと、渋いかんじのマスターにすぐ断られる。入り口でマキ姉を見つけた。渋さ知らズのヴァイオリニストもいる。彼と一緒にやったライブは以前行ったことがあり、すごくよかったのでああ惜しいなあ、と思う。すごすご二人、傘もないどしゃぶりの雨のなかを帰ろうとしていたら、情報元であった方が友達を見つけて遠くから名前を呼んでくださる。結局その方がマスターに話をつけてくれた。っていうか、話つけて席あくかなあ、と思っていたら、その方が自分の席を提供してくださり、ご自分は機材のそばの座り心地悪そうなパイプ椅子へ移動された。果たして席が二つできあがり。有り難い。

ステージと客席がすごく近い。とても贅沢なライブ。神戸でそして文字通りこんなに近くカルメンマキさんを聞けるのか。聞いたことのある言葉は中也の詩。朗読もとてもいい。むせびなくホーミン/揺さぶるヴァイオリンの太田さん、どこまでも子供のようなのにとても大人なピアニスト板橋さん。「ありがとう」を繰り返すはじめて聞いた歌に思わず涙がぽろぽろこぼれてしまい、友達がすぐに気付いて、「リクエストしましょか、あのロバの歌(わたしがよく歌う「山羊にひかれて」)」と、笑わせてくれる。ありがとう。春の嵐の夜。いろんな縁に感謝。


4月某日 神戸港に帰った船


よく行く本屋さんがイベントで古書市を開催している。本屋さんは神戸で海に関連した書籍を発行して百年以上の歴史をもつお店。二階のギャラリースペースで行われ、いつもと雰囲気がまったく違っている。この週末、なんやかんやと研究資料と称して買い込んでしまった。

とくに雑誌は駄目だ。本は残っても、雑誌は捨てられるから、古いものなど見つけると、いつ出会うかわからないという理由で、状態に関わらず買ってしまう。江戸末期の婚礼衣装についての論文が載っていたすごくおもしろそうな雑誌があり、紐で十数冊くくられていてバラでは売ってくれないみたいだから、大枚はたいた。戦前のものだった。

家に帰り、久しぶりの仕事のない休日で、昼寝でもしようかなと思ってテレビをつけると、近くの放送局のフリースペースでショーロクラブがライブするというではないか。それも無料。ブラジルへ移民する日本人が初めて渡航したのが神戸港から出た笠戸丸という船、出航したのががちょうど百年前にあたるらしく、関連イベントが神戸で色々と行われていてその一環だとのこと。ショーロとはブラジルのポピュラー音楽のスタイル、多民族国家であるブラジルがジャズやサンバなど様々な音やリズムが混じりあって独特の音楽文化を育んできた象徴ともいえる。大急ぎで放送局へ。

港から海風の匂いが漂ってくるようなライブだった。ショーロクラブが神戸や尼崎出身の音楽家のユニットだということを思い出させてくれる。とりわけ沢田さんのコントラバスのファン。ギターの笹子さんがバーデンパウエルに高校生の時にはまってしまったことからこの道に入ったというエピソードを聞いて、驚いたような納得したような。わたしにとってのショーロはバーデンパウエルのギターなのだ。クジラが昼寝をしてるとかという曲がよかったなあ。このライブは収録されてラジオで放送されるとのこと。久しぶりにのんびりした良い休日。


アンファッショナブル・ファッション日記 2008年5月

No.6 (2008年5月)

5月某日 インテリアとしての本


大阪梅田にあったナビオ阪急というファッションビルが阪急メンズ館として改装され新しくオープンしている。全館が紳士物を扱う。フロアによってターゲットを設定しており、カジュアルから伝統的なスーツまで、年齢を問わず利用できる品揃え。個性的なステーショナリーが集まるコーナーもあったり、なかなか楽しめる。わたしは本のコーナーが一風変わってていいという噂を聞いていて、ゴールデンウィークで出掛ける。

スペースは大きくないがカフェも併設されていてお洒落なセレクトショップ風だ。古本も入り交じり、本は丁寧に選ばれている。アートや哲学などをはじめ、ファッション、という棚もあり、なかなかにくい品揃え。けれども、この本棚は半年後、一年後はどうなってるのかなあ、と思う。そのままの品揃えなら、本はインテリアでしかなのかも、という印象。

一緒に行った友人は退屈そうで、早くこの建物から脱出してお茶でも飲みに行きたい様子。この本、この値段で買う?美しい洋書のなかから、笑える本を探してきたり。結局、わたしも手が出なくて、何も買えなかった。知的センスを磨きたい男の人のための本、女も同じように楽しめるので、興味のある方はぜひ行かれてみては。このぜいたくな場所がなくなってしまわない前に。


5月某日 所詮アングロマニア


話題のジョイ・ディヴィジョンの映画「コントロール」を見にいく。ジョン・レノンやボブ・ディランなど最近音楽映画の公開が目白押し。イアン・カーティス役の俳優がすごい。彼は「トレイン・スポッティング」にも出ていたようだが、ライブシーンはアフレコだと思っていたけど、エンドロールを見てびっくり、実際にパフォーマンスしたようだ。イギリス音楽が好きな人は一見の価値あり。全編モノクロで映像もとてもいい。わたしにも青春の映画。

ちょうど家に帰ると、去年からお手伝いさせてもらってた本「映画でわかるイギリス文化入門」が届いていた。所詮わたしはアングロマニア、今読んでいるところで、手前味噌だが、なんともおもしろい本。知ってそうで知らないイギリスの基本的知識も身につくが、入門書の域を越えているマニアックな本。きれいなスチールも散りばめられていて得感あり。わたしは、ファッションと音楽のトピックやコラム、ゴルチエが衣装担当したグリーナウエイの映画などについて執筆している。


5月某日 衝撃セーラー服おじさん


友人が招待されたということで、わたしも便乗して招待される幸運に恵まれ、心斎橋のクラブクアトロにフォールズというオクスフォード出身のバンドを見に出掛ける。期待の新人バンドという言葉は、連発されまくられ、「期待していいのかな新人」の意味にもはやなってしまってるような気がするが、フォールズはほんとにいい音出してる新しいバンドという感じがする。アフリカンビートとジャーマンミニマリズムみたいなものがうまく絡みながら、ヴォーカルはとてつもなくエモーショナル、わたしにはこの声(キュアのロバートスミスに似てる)がすべてを包んで、ブリットなバンドと言いたくなるのだった。平均年齢22歳で去年デビューしたばかり。

深夜のお笑い番組「あらびき団」で人気者となったセーラー服おじさん安穂野香がライブするフライヤーが目に入る。6月に同じクアトロにて。対バン「あぶらだこ」「WRENCH」「マゾンナ」となんだかすごいことになってるぞな面々。わたしはテレビ画面を直視できないのだが、目をつぶるとなんともせつない歌声でメロディアスなピアノを弾いているではないか。セーラー服おじさんは、この道キャリア15年以上で、中学校の元音楽教師、名古屋では路上パフォーマーととして有名な方なのだそうだ。調べてみたら、人間大學というレーベルからCDが出ていて売れ行き好調のよう。恐いものみたさで見に行くか、などと、学生にフライヤー見せながら、話をする。ヴィジュアル系と確かに呼べる、インパクト大。


5月某日 現代ファッションのテーマ


授業中に目が行くのは学生の顔でもなく服でもなく靴。わたしはこのクラスのコンバース率は?と、だいたい頭で換算しながら授業をしている、のを、学生は知らないだろう。靴を見ているといろんなことがわかる。ちなみにスニーカーのことをイギリスではトレイナーと言う。

コンバースはなぜこんなにポピュラーな人気を博しているのか。まず値段が他スニーカーブランドよりも2割くらい安い。定番のデザインがローカットとハイカットのみ、これは不動の人気であり、それに加えて毎年新しいデザインを出す試みも行っている。素材を革にしたり、ヒールつけてフェミニンにしたり、チェック柄やアニマル柄、靴紐やラインなどをアクセントにしてコンビ色にしたり。

コンバースの機能性はというと、靴底が薄くて冬や雨にも不向き、サイドのシールが甘くて小石が入ってきたりして海などのアウトドアに不向き、けれども薄い分軽いし、価格の安さと色のヴァリエーションが豊富で、着替えやすい(つまり、もう一足、となる)。

わたしはハリスツイードを使った限定版を大切にしているが、いまのハイカットで4代目。かつて読んだくらもちふさこの漫画で、コンバースの履き崩し方をチェックしてその男の子を好きになるという一コマを思い出している。

機能性とデザインはいついつまでもファッションのテーマだ。最近は来たるオリンピックに向けて、競泳用水着の話題がテレビをにぎわしている。イギリスのSpeedo社の水着が新記録を次々と生み出しているが、日本選手は契約上これを身につけられないというもの。

日本水泳協会が提携しているのは、アシックス、デサント、ミズノといずれも関西のスポーツメーカーだ。スピード社のものはシームレスな高機能素材。これに対抗できるものを性急に改良して製造することを求められているという。競技がプールに入って泳ぐ前から始まっているのがなんだか厳しいがおかしい。


5月某日 人生はキャバレエ!?


サーファーだった幼なじみに勧められて聞いたのはまだ十代半ば、隣に住んでた従兄が持ってたベスト盤をせしめて、いまだにずっと聞き続けているのが石川セリ嬢。嬢というにはすっかり大人の女性なのだが、理想の男性が井上陽水であり続けている友人に誘われ、ライブに行って来た。23年ぶりになるアルバムが出るらしく、公演もそれに関連したものか。場所はブルーノートが経営も名前も変わったビルボードライブ大阪。

わたしはヌヴォラというイタリアの避暑地ブランド(?)の黒いワンピースに、ニナリッチのアンティークのスカーフをアレンジして、髪を久々にアップにして、ブルーの石のアクセサリーで出掛けた。永遠の憧れの女性、石川セリの歌声を生で聞くのははじめて。できるだけエレガントに女性らしく?友人は土曜というのに仕事してたらしく、一足先に会場につきビールを飲んでいる。大好きなシェリーがメニューにあったので、わたしもそれを頂くことにし、早く会場に馴染みたい。

石川セリは何故かわたしには「さぼりミュージック」、学生の頃からカセットに音楽入れて、学校さぼるときの友にしていた。さぼる場所は、自転車で行ける、油のにおいがする、怪しい外人のいる、いまはなき荒廃したイメージの大阪港だった。彼女に関わるミュージシャンを含めて、わたしの音楽人生(耳)に大きな影響を与えてきたのだ。アルバムをせっせと集め、上記陽水好きの友人に貸したりして、洗脳もしてきたし、ずっと聞いてきた。

18世紀ロココ風のヘアスタイルであらわれたセリ嬢は、ラメラメの黒いミニドレスに、濃いピンク色の大きなリボンをあしらっている。可愛い。大病を患ったということで、足下がふらついているように思え、友人と顔を見合わせ「大丈夫か」、30分もしないうちにステージを去り、ムーラン・ルージュのダンサーよろしきピアニストが、そのステージを見事に埋める。まだ二曲?三曲しかしてへんやん。

セリ嬢は娘さんを連れて戻って来る。サテン地のオレンジでゴージャスなドレスに衣装替え。「ダンスはうまく踊れない」を歌われるが、歌詞がめあいまいなかんじ。あたしのほうが全部覚えてるやん、娘のコーラスは、アンコール時の「ムーンライトサーファー」では主ヴォーカルにいつのまにか変わってる…。ドラム、ギター、ベースともにテクニシャンなメンバーに支えられた良いステージ。ただ実物見れたことにわたしは喜びでいっぱいである。

1時間もしないうちに終ってしまったステージの後、わたしたちはなんとなく消化不良な感じもあって、北新地へ向かい、カラオケなどに興じてしまったのだった。わたしは石川セリになりたくて、セリ嬢が舞台で歌っていた曲以外も歌いまくる。谷川俊太郎の詩で武満徹作曲の歌とか一度生で聞いてみたかったなあ。最後はタパスバーに行って解散。エミ・エレオノーラが弾き語りしてた「人生は、キャバレエ、一度きり、遊ばなきゃ」を思い出しながら。


5月某日 雨の日の掘り出し物


在学時代は一度もいかなかったのだが、友人に誘われて、母校の女子大へ。この日は年に一度の「愛校バザー」、しかし朝からすごい雨。雨女なので雨降りに出掛けるのは慣れっこだが、中庭にテント出して店開きすることもあり、行くか迷う。晴雨開催らしく、雨の方がいっそう掘り出し物ありそう、という友人のメールで重い腰をあげる。

ヴォーリズの建築によるキャンパスは、何年ぶりかで出掛けてみると、あらためて美しいなあと思う。山の中に建物があるので、雨に濡れた木々のなかを息切らしながら坂道を登る。雨と緑が入り交じりとてもいいにおいがする。少し肌寒かったのでマッキントッシュの薄手のコートはちょうど良かった。贈答品を中心にした店舗エリアでは、中高生の在校生たちが、大声あげて商品を売っている。「後悔しても後の祭りですよ」という売り文句に笑う。なぜか「朝青龍」と書かれた湯呑みを勧められ、苦笑した。

ふだん使っているシャンプーKERASTASEの名前が入ったバスピローを発見。きれいなリボンのついたレースの袋に、やわらかくて白いタオル地で作られたバスピローが入っており、ファスナーが付いているので洗うこともできる。お揃いで白いキャンドルも入っている。しっかりした大箱に入っており、1200円の値札が付いている。高い。これは明らかに販促物だと思われるので、せめて500円にしてと交渉していたら、売り子さんが友人の知り合いだったので、「彼女、OGですよ」と言うてくれ、まけてもらった。

ウエッジウッドの食器とか、アールデコ風の洒落たランプとか結構いいもの売っている。その他、使い道ないのに衝動買いしたのが、スコットランド製の蝶ネクタイ。ボーイズ用なのだろう。きれいなタータンチェックにひかれて。その他ブローチ、イタリア土産っぽいレモンの石けんなどを買う。友人は、インスタントのラザニアや、どこで見つけて来たのか、野菜の水切り袋など台所関連の品を買っている。

アイスクリーム食べて、ポップコーン買おうか、というてる頃には、雨がやむ。バザーは終わりの鐘とともに終了。聖書の一節がキャンパス中に放送され、なつかしくてパイプオルガンのある礼拝堂へ入ってみる。そこは仄かに明るくて暖かかった。帰りはシェイクスピアズガーデンという小さな英国式庭園を見に行くと、紫色の大きな薔薇が野草のように咲いていた。毎日通っているときは嫌で嫌でしょうがなかった学校もたまに遊びに来るとなんとも風情のある空間と時間を体験できる。


アンファッショナブル・ファッション日記 2008年6月

No.6 (2008年6月)

6月某日 左岸に想う


イヴ・サンローラン死去のニュースが舞い込んでくる。新聞でも、テレビでも。わたしには、友人からのゴシップじみたメールで。

あらためてすごい人だったのだなあと思う反面、わたしにはエレガンスを追求する、保守的なデザイナーだったという印象を拭えないでいる。80年代半ば、わたしのはじめての(そして唯一の)持っていたサンローランは、黒いハイヒール、つまり靴だった。大学に入学した時に、母に買ってもらったはじめてのハイヒール。細いストラップがついていて、留め金にゴールドが施されている。スーツやパーティ・ドレスなどお洒落した時によく履いていた。

モンドリアンドレス、ブラックやピカソなどシュールレアリストたちとのコラボレーションで、60年代や70年代はアートとファッションを融合させたデザイナーとして知られた。やがて、プレタポルテでもその活躍の場を広げ、エスニカンなモチーフやサファリルックなどマスキュリンなフェミニニティを打ち出す。イブ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ、という「左岸」を意味する言葉をブランド名である自分の名に加える。

左岸は、いうまでもなく、パリ中心部を東西に流れるセーヌ川左岸を意味する。ソルボンヌなど大学があり、68年の反体制運動はここから起こり、カフェなどから発信される新しい芸術や文学などの文化活動を牽引した。新しさ、革新性を象徴する場としての「リヴゴーシュ」。

フランス国外からの退廃性や反逆性がパリモードを席巻し、アンチ・エレガンスの意味も希薄なストリートのカジュアルスタイルが主流になるにつれて、サンローランという「デザイン」は、拡大化していくブランドビジネスのなかで形骸化していく。大切にしていた、わたしのただひとつのエレガンスは、たぶん今もどこかに直し込んでいる。きっとまだ履けるし、これからも大切な場面に取り出して、履き続けていこう。


6月某日 アンファッショナブルがいい


いよいよタスポ導入が関西エリアでもスタート。タスポとは、未成年者喫煙防止取り組みの一環としてはじまった、自販機で煙草を購入する際ICカードで成人しているかどうかを認証するシステムだ。申し込みも発行も無料だという煙草を買うためだけのいわば身分証明だが、ほんとうに皆この制度を利用するのだろうか。自販機で買わず、煙草屋で購入する人が増えそうな予感。わたしのまわりは喫煙者が多く、その動向がとりわけ気になる。コンビニも煙草屋として活躍しそうだというニュースも流れている。

このサイトでのプロフィールにも、男はスモーカーでギタリストがよろし、と長いこと載せてきたけど、それをおもしろがって抜粋されたりすることが多かったが、わたしは煙草は吸っても吸わなくてもどっちでもよいと思っていて、ただ神経質な嫌煙ブームだけはいただけないと思ってきた。おいしいお酒やいい音楽とともに、煙が生理的に苦手な人もいるから、マナーさえ守ればいい嗜好品ではと思っている。

いままで好きになった男の人はみな煙草を吸っていた。たまたまだとは思うが吸わない人とは続いたためしがない。不器用な恋愛がおわってしまったあと、その人のことが忘れられないと、その人が吸っていた煙草を買ってきてお香のようにして香りにひたってみることがよくあった。たとえばLambert & Butler, JSP, Peace Lights, Drum....おっさんくさいがなかなかいい煙だ。Marlboro, Lucky Strike, Golden Virginia....パッケージはいいのだが香りは好きになれないままのものもある。

わたしはノンスモーカーだが、煙草は嫌いではない。むしろ好きだと思う。男の人は身につけるアクセサリーが少ないから、眼鏡とか万年筆とか煙草とか、女とは違うアイテムで演出される、と思っている。お酒はアクセサリーにならないが、煙草の煙は十分なりうるのだ。今の時代、かなりアンファッショナブル?


6月某日 好きな店


いつまでも好きな店が同じ場所にあり続けるというだけで幸せなことだ。そこにいけば、いつでも自分を待っているような服があり、困ったときに出掛けたり、何もなくても出掛けると楽しい時間がある。

何かのファッション雑誌ではじめてみて、ペイジの白いスタイリングにひとめぼれ。自由が丘に店があるときから通っていたピークパフォーマンスが閉店するという。代官山に移ってからはあまりわたしも行けなくなっていた。

東京に行く時は必ずまとめ買い。ピークは服だけでなくアクセサリーもそろっていた。元々スウェーデンのスキーウエアメーカーだが、スポーティなのにカジュアルだけに終わらないところが好きだった。

季節のカタログが豪華でなによりの楽しみだった。マップに使ったり、ポストカードは必ず壁に貼っていた。スキーウエアメーカーとはいっても、ピークの服は夏も良かった。スポーツウェア感覚は、動きやすく、洗濯に強く、型くずれしにくく、発色が良い。

よく着ていたのは、鹿の子のピンク色半袖パーカー、赤とピンクとグレーのストライプの入った厚手のTシャツ。臙脂色のブルゾンは軽くて暖かくて雨風にも強い。パンツもスカートもセーターも着用しまくっていて、これからも大切に着ようと思う。


6月某日 私的神戸ミニツアー


妹が神戸に一泊滞在することになった。ひさしぶりに会う。我が家でウェルカムドリンクのあと、まずは南イタリアの味が楽しめるピッツェリアAzzurriへ連れて行きたい。予約の電話を入れようと思ったがすでに話し中。結局直接向かう。リーズナブルな価格で本格的なピザが食べられる。素材をいかした味で大ファンなのだがいつもいっぱいで結局待ち時間が1時間。名前を控えておいてもらい、席が空くまで神戸は山側をぶらぶら散歩。

やがて夜も更けてきたが、異人館の方へ行く途中にあるジャズのライブハウスBig Appleに目をやると、東京からピアニストの渋谷毅さんが来られている。ちょうど開演少し前で入ろうか迷う。ピザかピアノか。地下を降りるとカジュアルなピアノ演奏が聞こえてくる。5分くらい悩んだが、結局食欲に負けて、ピザを取ってしまった。さらに山側へ歩いて行くと、急に坂がきつくなって、ほとんど山登り状態。肌寒くなってくる。

北野町あたりは、異人館で有名だが夜はもちろん開いてないので真っ暗。しかし古い洋館のような造りのマンションやアパートなどが立ち並び、素敵な照明が窓から漏れ出ている。がんばって坂道を上れば海が遠くに見え、夜景もとてもきれいに見下ろせる。木々のいいにおいもする。都会からすぐ足をのばせるのに森林浴も楽しめる場所だ。

一時間程して店に戻ったが、まだ待たなければならないよう。焦げ目が香しく、白くてもちっとした生地の触感、たっぷりのハーブ、フレッシュなトマトソース、外のベンチに座ってメニューを見ながらいろいろと想像する。入れたのは9時。長い待ち時間を忘れる美味しさ。わたしたちは3種類のキノコのピザと生ハムとルッコラのピザを頼む。両方ともに薫製の水牛モッツアレラをのせてもらう。ワインでピザを待つ間に頼んだ3種類のオリーブもおいしい。


6月某日 私的神戸ミニツアー(続き)


一泊して朝、昨日妹が来る前に買っておいた、廃校になった小学校を利用してできた北野工房のまちに入っているパン屋Saint Michel の食パンでサンドウィッチを作る。トマトをスライスして、ベーコンを焼いたものをはさむ。黒こしょうと育てているバジルをちぎってのせ、薄くマヨネーズをぬったパンにはさんでできあがり。コーヒーをいれるのが得意な妹にコーヒーは頼むことにする。そのあいだにいい天気なのでたまった洗濯物を。

お昼頃から、町へ繰り出す。トアウェストにあるヨーロッパのアンティーク釦屋Rolloへ。妹は一人なら3時間くらいいたいところだといいながら、熱心に小さな釦を物色している。わたしはフランスのデッドストックの自分のイニシャルが刺繍されているリボンを買う。カットして縫い付けたりして使うようだ。すべてのイニシャルがそろっているわけではないので、見つけたことがうれしかった。

それから海側へ降りて、元町商店街へ。老舗のテーラーが並び、神戸ではじめてコーヒーを出したお茶屋なども並ぶ名店街。マシュマロの好きな妹のために、今話題のマシュマロ専門店、神戸マシュマロ浪漫へ行く。レモン、ストロベリー、ココア、抹茶など、果汁や本格的な材料を使ったマシュマロ。焼きマシュマロもおいしい。パッケージも可愛い。

さらに南へ、栄町から海岸通りへ。このあたりは個性的な雑貨店が立ち並び、潮風が感じられる明るい神戸らしい町で観光客も大勢。そんな雑貨店の中でも老舗に入るparamount on paradeへ。栄町ビルヂングというレトロなビルの1Fにある。このビルにある店はひとつひとつのスペースが小さな学校の教室みたいで、喫茶店、ギャラリー、洋服店と、楽しそうに階段を行ったり来たりして店のはしごをしている女子でいっぱい。

お腹はすかないがお茶が飲みたくなり、今年に入った頃からよく行っているバリスタもいるカフェAnthemへ。ビルの4Fにあり階段をせっせとのぼらねばならないが、のぼりきった後に広がる落ちついた空間が好きだ。古いオルガン、靴の絵、さまざまオブジェが素敵だ。多くのお客さんは遅いランチを食べていて店内はパスタのいいにおいがする。妹が好きな画家Andrew Yyethの画集が本棚に置かれており、中央の大きな木のテーブルに席を見つけて座り、本を広げて眺める。

こだわりのセレクションの古書と新刊書が家の本棚のように並んでいるvivo,va bookstoreへ。ここもビルの4F、そして細くて狭い急な階段。神戸出身の写真家の小さな個展をやっていて、新刊の写真集のプロモーションのようだ。船の設計図、詩とその英訳、写真の他にも工夫のこらされた素敵な写真集だった。大好きな本屋なのだが、妹はわたしが本屋へ来ると何時間も動かないのを知っているので「まきでお願いします」と小声で言う。

本屋を出るとお腹がすいてしょうがない。日曜日で競馬新聞と赤ペン持ったおじさんたちがWINS前にあふれている。いまのうちにとラーメン店に入る。店名は忘れたが、JR高架下にある何気なく入った店だが、なかなかおいしい。店内には芸能人のサインや取材記事などが壁に掲げられている。わたしはワンタン麺を妹はチャーシュー麺を食べる。食べたら早く出ないと、この小さな店におじさんたちが押し寄せてきそう。

心残りの釦を求めて、再びトアウェストへ。妹は青い小鳥の釦を選び、手作りでペンダントを作れるキットを買っている。最後は、オレンジピールのチョコレートがおいしいショコラティエLa Pierre Blancheへ。家への手土産にと買って妹に手渡す。マロングラッセやプルーンの赤ワイン漬け、ピスタチオのマカロンなどチョコレート以外にもお菓子がたくさんあり、チョコレート色のシックな内装で店内でお茶も飲めるおすすめのお店。

すっかり観光客気分でリフレッシュできた二日間。


6月某日 幸せになるための27のドレス


映画館でチケットを買うときに、思わず恥ずかしくて最後まで言えなかった邦題。オリジナルは、27dresses ー「27枚のドレス」なのに。この映画を見れば幸せになる方法がわかる、と錯覚してしまいそうになる?!どのような邦題を付けるかは、観客動員数の効果につながるから、とても重要だ。

日本の仲人とは少し違うのだが、イギリスやアメリカでは結婚式のときに花婿・花嫁介添人というのがいる。親しい友人であるケースが多く、ユニークなスピーチが期待される。

花婿介添人が主役だった『フォー・ウエディング』のアメリカ版という感じの映画。主役は花嫁介添人で、週末は掛け持ちするくらいに結婚式へ出掛ける予定が入っている。『プラダを着た悪魔』の脚本家など同じスタッフが手がけた映画ということで、主役は彼女の身につける衣装でもある。

彼女はいつも着替えている。そしてこれまで出た結婚式の衣装はすべて購入したものでストックされており、クローゼットの中はかさばるドレスでいっぱいなのだ。結婚というよりも、結婚式マニア、なのだ。

いわば裏方である彼女はなかなか主役になれない。自分が思いを寄せていた上司と、イタリアから帰って来たばかりの妹が恋に落ちてしまい、その結婚式をプロデュースすることになってしまった。堅物な姉と違い、妹は華やかで色っぽく、至極対照的だ。

28枚目のドレスは白いウエディングドレスになるのだろうか?女性にとっての結婚や結婚式、そしてウエディングドレス神話が、いつまでも根強いことを語っている映画。いつもサポート役の彼女が、結婚式の記事を書いている若いジャーナリストを好きになっていく途中の、会話のテンポや心の微妙な変化がうまく描かれている。きれいな衣装とともにアメリカの結婚式とは何かを楽しめる、痛快な映画。

でも、チケット買うとき、ちょっと恥ずかしいです。