No.6 (2008年4月)
4月某日 <わたし>のマンガ
友人が作画、わたしが原作書いた、ゴシックロリータ漫画が掲載された「架空2号」がエイプリルフールに発行。
これはシリーズで描いていく予定のファッションエッセイマンガで、服飾専門学校に行くお金を貯めるために中古レコード屋でアルバイトしている女の子が主人公。ロリータ服に身を包み、店長からは変な服と言われながらけなげに働く、世界との摩擦を淡々と時にユーモラスに描く、徹底的虚無装飾日常風景。生地を買って服を自作したりもするミチヲの衣装も楽しめる。いま主人公のミチヲが東京行ってひどい目(おかしな目)に会う「なんでやねん」編が出来上がりつつあるところ。
自分の作品以外で雑誌に掲載されているもので好きな作品もある。甲野酉さんの無表情にしかしハードな日常を描くOLマンガ「幸福番外地」に心惹かれる。春の雑草がつけた小さくて可愛い花のような希望に満ちている。吐血ミンチさんの「バイオレンスガール 脳内処理」も、自分のために描かれたマンガのようで、はまりまくる。枕元に置いて何度も繰り返し読む。
4月某日 わたしだって、モンクレール
友人が仕事で神戸に来るという。わたしにとっての永らくの神戸っ子であり続けた人だが、わたしが神戸に引っ越したらすぐに神戸を出てしまい、すれ違い。4月なのにとても寒かったのと、少し風邪気味だったので、子供用のモンクレールのブルゾンを羽織っていたら、「のんちゃん(わたしのこと)、モンクレール!」が、会って第一声だった。
イメージと違うのかなあ。実践しない山登りファッションや下手の横好きスピード狂につきスキーウエアマニアなわたしを知らなかったのか。なかなか服を売ってくれない古着屋で、自分の本と無理矢理交換してもらった戦利品。モンクレールはご存じグルノーブル(スキーで有名なスイスにほど近いフランスの町)発のファッショナブルなブルゾンで人気が定着したブランド。
わたしのはもろスキーウエアっぽい逸品。ずっと壁に飾っていて、入手して一年以上経った春になって初めて着用したが、なかなか気に入った。このモンクレールは日本で流行する以前の旧ロゴで貴重だ。サイトで調べて見ると60年代の頃のデザインに色や素材感が似てる。飲茶をだらだらと頂きながら、昔話にはなかなかならず、現在のお互いの仕事の話などで盛り上がる。
4月某日 垣根のない音楽!
一筆ですごいデザイン仕上げる東京在住の小川さんから、行かなきゃだめ、の連絡もらい、脱臼パンク(小川さん命名)なベルギー実験音楽バンドThe Crappy Mini Bandを見に出掛ける。場所は、大好きな十三という歓楽街のなか。
この町はわたしにとって映画を見たり、ライブを見たり、そしてお菓子を買うところ。いつもここに来た時の定番、下町の洋菓子屋さんで前もって電話で取り置きしてもらってたロールケーキをまず取りに行く。今ロールケーキブームで、ここも例にもれずその波にのまれており、だいぶねばったがたった一つしか売ってくれなかった。わたしは20年くらいここのロールケーキが一番と思って食べ続けてるのだが、どうか早くこのブームが去って欲しいと思う。
ライブはこの下町十三にある銭湯で行われ、12歳以下のキッズは無料らしく、ステージとなる脱衣場は、がきんちょでいっぱい(彼らも驚異のパフォーマーへとやがて変身することになる)。ワインのボトルや手作りのおつまみを持ち込んでほとんど花見状態のサラリーマンやOL風の方もおられたり。すごいことになってる、演奏始まる前からすでに。一緒に行った友人は銭湯マニアなので、雨のなかうまく騙して連れてきた。そのお礼もかねてたったひとつしかない(しつこい!)ロールケーキをお土産に手渡す。
チューバの高岡さんは、ゲストというよりバンマス、面倒見のいいツアーコンダクターみたいだった。no words dayという曲にわたしは感動する。みんなで合唱もする、no words day ー言葉のない日、というサビの歌詞を。子供も大人も、男も女も、サラリーマンもミュージシャンも、わたしもあなたも、言葉のない日、という言葉=歌、が確かにある日。じーんとした。
多ジャンルにまたがり即興のセンスを維持しながら、音作りもそして演奏も安定していてすごく良かった。わたしはライブが終った後、パクヤンさんのトイピアノに触らせてもらった。
4月某日 縁を大切にしよう
最近偶然が多くて、もはや偶然でなくなってきている。それを何と言おうと考える。それは「縁」なのかな。
しばらくお酒を飲んでいないわたしだったが、久しぶりに神戸の呑み友達と会うことになった。駅で待ち合わせしたら、友達が「カルメンマキが今夜これからライブらしい」と言うではないか。わたしを待っているときに偶然駅で会った知人が、一緒に演奏されるピアニストのファンだとかで、今から行くところだという話を聞いたばかりなのだとか。友達はカラオケでわたしにマキ姉の歌を歌わせるのがうまい。わたしはマキ姉の歌ならだいたい何でも歌える。とにかく大好きな歌手なので。寺山修司X田中未知のコンビによる歌など最高。情報聞いて会うなり「えーっ」と駅で絶叫してしまった。
結局いつもの焼き鳥屋へ行くつもりがライブ会場に行ってみようということになった。小さなジャズ喫茶で行われるライブ。店はすでにお客さんでいっぱい。予約してないと席はないと、渋いかんじのマスターにすぐ断られる。入り口でマキ姉を見つけた。渋さ知らズのヴァイオリニストもいる。彼と一緒にやったライブは以前行ったことがあり、すごくよかったのでああ惜しいなあ、と思う。すごすご二人、傘もないどしゃぶりの雨のなかを帰ろうとしていたら、情報元であった方が友達を見つけて遠くから名前を呼んでくださる。結局その方がマスターに話をつけてくれた。っていうか、話つけて席あくかなあ、と思っていたら、その方が自分の席を提供してくださり、ご自分は機材のそばの座り心地悪そうなパイプ椅子へ移動された。果たして席が二つできあがり。有り難い。
ステージと客席がすごく近い。とても贅沢なライブ。神戸でそして文字通りこんなに近くカルメンマキさんを聞けるのか。聞いたことのある言葉は中也の詩。朗読もとてもいい。むせびなくホーミン/揺さぶるヴァイオリンの太田さん、どこまでも子供のようなのにとても大人なピアニスト板橋さん。「ありがとう」を繰り返すはじめて聞いた歌に思わず涙がぽろぽろこぼれてしまい、友達がすぐに気付いて、「リクエストしましょか、あのロバの歌(わたしがよく歌う「山羊にひかれて」)」と、笑わせてくれる。ありがとう。春の嵐の夜。いろんな縁に感謝。
4月某日 神戸港に帰った船
よく行く本屋さんがイベントで古書市を開催している。本屋さんは神戸で海に関連した書籍を発行して百年以上の歴史をもつお店。二階のギャラリースペースで行われ、いつもと雰囲気がまったく違っている。この週末、なんやかんやと研究資料と称して買い込んでしまった。
とくに雑誌は駄目だ。本は残っても、雑誌は捨てられるから、古いものなど見つけると、いつ出会うかわからないという理由で、状態に関わらず買ってしまう。江戸末期の婚礼衣装についての論文が載っていたすごくおもしろそうな雑誌があり、紐で十数冊くくられていてバラでは売ってくれないみたいだから、大枚はたいた。戦前のものだった。
家に帰り、久しぶりの仕事のない休日で、昼寝でもしようかなと思ってテレビをつけると、近くの放送局のフリースペースでショーロクラブがライブするというではないか。それも無料。ブラジルへ移民する日本人が初めて渡航したのが神戸港から出た笠戸丸という船、出航したのががちょうど百年前にあたるらしく、関連イベントが神戸で色々と行われていてその一環だとのこと。ショーロとはブラジルのポピュラー音楽のスタイル、多民族国家であるブラジルがジャズやサンバなど様々な音やリズムが混じりあって独特の音楽文化を育んできた象徴ともいえる。大急ぎで放送局へ。
港から海風の匂いが漂ってくるようなライブだった。ショーロクラブが神戸や尼崎出身の音楽家のユニットだということを思い出させてくれる。とりわけ沢田さんのコントラバスのファン。ギターの笹子さんがバーデンパウエルに高校生の時にはまってしまったことからこの道に入ったというエピソードを聞いて、驚いたような納得したような。わたしにとってのショーロはバーデンパウエルのギターなのだ。クジラが昼寝をしてるとかという曲がよかったなあ。このライブは収録されてラジオで放送されるとのこと。久しぶりにのんびりした良い休日。

