ローカリゼーションに未来がある。

週刊ファッション情報 編集長 井上和美

 ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ女史などが監督したドキュメンタリー映画『幸せの経済学』を渋谷の小さな30人くらいしか入らないアップリンクという映画館で観た。平日だというのに、20歳代から30歳代の若いカップルや女性で満席だった。福島原発事故の影響もあってか、自然や地元、田舎へ興味を持ち始めている若者の声なき声だったように思えた。ヘレナ女史は、ベストセラー「ラダック 懐かしい未来」の著者で、ローカリゼーション運動のパイオニア。幸せとは?豊かさとは?について考えさせられる内容だった。

 『ローカリゼーションは経済的な言葉で、生産地と消費地、生産者と消費者、人々と自然界の距離を縮めることをいいます。地域にある小さなビジネスを再評価し、巨大な企業に奪われていた富や豊かさを取り戻す』ことだと対談で語っている。一方のグローバリゼーションは、巨大な企業に富をもたらすが、労働者や庶民、中小企業にとっては不都合なことが多過ぎるのが現実。特に、地方になればなるほど、不利益な点も多くなる。地球温暖化、環境問題、自然災害だけでなく、心の病を抱えている人が急増している現代、人として本当の幸せを見つけることが急務となった。

 パリを拠点に活躍していたファッション・デザイナー岡本順氏が、JUN OKAMOTOのパターンを使ったセミオーダーライン「wallflower by jun okamoto」をデザイナー自身の故郷でもある熊本にオープンしたというニュースだ。熊本は、元々、オシャレな人が多い街だという点もあるが、あえて故郷を選んだことが未来的である。地域の人達のニーズを聞きながらオーダーメイドを行う姿は、ココ・シャネルの成功した姿とかぶってしまう。ココ・シャネルが、戦争中疎開していたフランスの高級避暑地「ドーヴィル」でクチュリエとして最初に成功した田舎街だ。大手企業とのコラボレーションも生活のためには、重要な活動だが、継続可能かというと疑問だ。それよりも、地元に根ざしたニーズを探すことは、継続できることが多い。

 単に、地方にいるだけでは発展しない。ITを使うべきだと思う。ユーチューブやユーストリームなどの動画、ツィッターやフェイスブックなどのソーシャル・ツールを使って、全国の人達や海外の人達と国際的な交流を深めることも同時にやるべきだ。ショップで地域の人達と、ネットで全国の人達、世界中の人達と立体的に交流し、販売することが本当の意味のローカラリゼーションだと思う。地域で生産されたものをその地域で消費する「地産地消」にこだわる人も多いが、地元でデザインして、世界中に販売する方がいい。大都会で高い家賃と人件費、物流費を払うより、効率よく企画・生産・販売できる方法を考え、そして実行することが真意だと思う。地方から本当の幸せが見えてきたようだ。

http://www.fashion-j.com/r/20110621senken.pdf
【掲載】繊研新聞 2011年6月21日掲載

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