2017年ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)受賞のフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督最新作『希望のかなた』の公開直前先行試写会が11月27日(月)渋谷・ユーロスペースにて開催され、カウリスマキ監督の大ファンであり、初期の作品からずっと見続けているというイラストレーターの石川三千花さんが上映後のトークイベントに登壇。

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<映画『希望のかなた』トークイベント付き先行試写会>
■日時:11月27日(月)
■場所:渋谷・ユーロスペース
■登壇:石川三千花(イラストレーター) 司会:大竹久美子(映画『希望のかなた』宣伝担当)
■主催:ユーロスペース

今回カウリスマキが大好きということで駆け付けたイラストレーターの石川三千花さんは劇中に登場する「大勉強の店」帆前掛けをスタイリッシュに着こなし登場。映画の感想を求められると開口一番、「ジミヘン!」と劇中でレストランの壁にかかっているジミ・ヘンドリックスの肖像画が気になってしかたなかった、と語った。

初期のころからカウリスマキ監督の作品を見続けているという石川三千花さんは難民問題をテーマにした本作について、「政治的なメッセージを秘めつつも相変わらず寡黙でクスッとするような感じとか、カウリスマキの良いところがつまっている。」と本作を絶賛した。

日本にも大変ファンの多いカウリスマキ監督だが、会場には男女とも幅広い年代の方が駆け付け、司会が会場に向けてカウリスマキ作品初体験の方を問うと一割ほどが挙手。カウリスマキ作品のひとつの特徴として、俳優陣が決して美男美女ではない味のある顔立ちの方が多いことに触れ、司会から「この中にお好みの方がいるんですよね?」と暴露された石川さんは レストランサービス長カラムニウス役を演じたイルッカ・コイヴラを指さし、「独身かって聞かれて『独身です、あえて』って言う。「あえて」ってつけるところがいいんですよね。」と独特の萌えポイントを語った。

本作で印象的なシーンとして、石川さんは、主人公カーリドが密航船から出てきてすぐに、路上のミュージシャンに投げ銭を入れるシーンをあげ、「自分だってそんな場合じゃないのに。自分が苦しくても弱い人たちを見過ごせないっていうカウリスマキの優しさをすごく感じますね。」と語った。また「驚いたのはネオナチがカウリスマキ作品に出てきたこと。

だけどホームレスみたいな人がネオナチをやっつけるのよね。カウリスマキにしたら今の状況って、『ヨーロッパ、お前もか』って感じなんでしょうね。ナショナリズムが台頭していて、さすがのカウリスマキもメッセージしたいっていうのがあったんでしょうね。それでも『希望のかなた』はいい塩梅でいつものカウリスマキ節が出ているからスゴイ好きなんです。観終わったときにほんわかした気持ちになるっていうのが良い所ですね。」と感想を述べた。

続いて、石川さんはカウリスマキ作品の男性版ミューズであり、1995年に惜しまれつつ亡くなった故マッティ・ペロンパーを取材した貴重な思い出を披露。「飲んでばっかり。共同記者会見で真っ赤な顔をして出てきて、一言もしゃべらず笑っているだけ。きっとシャイでお酒を飲まないとやってられないのね。」と分析。

盟友カウリスマキ監督も酒が好きなことがよく知られており、司会から『白い花びら』来日キャンペーン時に「空港に迎えに行ったら手ぶらで出てきた。荷物はポケットに入れたパスポートとパンツ1枚だけ。それが帰りにはファンからプレゼントされた一升瓶でトランクがいっぱいになった。実は恐妻家でフィンランドでは奥さんにお酒の量をセーブされてるんです。」と聞くと、石川さんはまるで赤塚不二夫さんみたい!」と会場の笑いを誘った。

また石川さんは共通項の多い監督として80年代に時を同じくして登場したジム・ジャームッシュ監督の名前をあげ、「二人ともポジティブな世の中に対してそこから外れてる人たちが映画に出てくる。アウトサイダーや貧しいんだけど清く正しく美しく生きてる人たち。決してメインストリームにはいかないんです。つつましやかだけど小さな幸せを描いていて見るとほっとするんです。ずっと見続けていたい。でもマーベルみたいなスーパーヒーローだけじゃなくて、たまにはこういうのも必要ですよね。」と述べた。

カウリスマキの作品に必ず登場する犬は、歴代のカウリスマキの愛犬がつとめており、『希望のかなた』でも監督の愛犬ヴァルプが名演技を見せている。石川さんは「毎回出てくる犬もいわゆる犬タレとは全然違う。人情味の溢れる犬なのよね。」と語った。

ほか見どころである音楽とワサビについて「カウリスマキの作品は音楽がいつもノスタルジックというかメランコリックですね。日本の曲を使うのも好きですよね。『過去のない男』ではクレイジーケンバンドの「MOTTO WASABI」を使っていたし。昔、渋谷に行きつけの寿司屋があったていうから、その時のエピソードも使われてたりするんでしょうね。でも映画に出てくるワサビが生ワサビじゃなくて、業務用みたいな練りワサビ。あのシーンは日本人にも分かりやすいところですね。」と述べた。

最後に今年還暦を迎えたカウリスマキ監督に「60歳、まだまだ現役。これからもずっと撮り続けてほしい稀有な監督です。」とエールを送った。公開を前に本イベントで一足早く鑑賞した一般来場者からの感想コメントがSNSなどで多数広がりを見せている。

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【登壇者プロフィール】

■石川三千花(イラストレーター)
イラストレーター&エッセイスト。セツ・モードセミナー卒業後、デザイナーとして活躍後、3年間のパリ滞在を経て、フリーランスのイラストレーターになる。以降、映画、ファッション等についてのイラスト、エッセイを発表。
著書に「石川三千花の勝手にシネマ」、「石川三千花の勝手にオスカー」他多数。

【STORY】

内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランのオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手を差しのべ、自身のレストランに雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていた。それぞれの未来を探す2人はやがて“家族”となり、彼らの人生には希望の光がさし始める…。

監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン
2017年/フィンランド/98分/フィンランド語・英語・アラビア語/DCP・35mm/カラー/
原題:TOIVON TUOLLA PUOLEN/
英語題:THE OTHER SIDE OF HOPE/
字幕翻訳:石田泰子/提供:ユーロスペース
松竹/配給:ユーロスペース/
宣伝:テレザ
後援:フィンランド大使館
協力:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所
特定非営利活動法人 国連UNHCR協会
推薦:カトリック中央協議会広報
© SPUTNIK OY, 2017

http://kibou-film.com/
2017年12月2日(土)より、渋谷・ユーロスペース、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!



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