10月5日(木)より行われてきました山形国際ドキュメンタリー映画祭2017(YIDFF)の受賞結果。本映画祭は、1989年より隔年で開催され、記念すべき15回目を迎ました。今年は映画祭全体で161本の作品が上映。

インターナショナル・コンペティションより

ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
『オラとニコデムの家』

オラとニコデムの家
オラとニコデムの家

監督:アンナ・ザメツカ
ポーランド/2016/72 分
“Communion” Director:Anna Zamecka
Republic of Poland/2016/72 min.

アジア千波万波より

小川紳介賞
『乱世備忘—僕らの雨傘運動』

乱世備忘—僕らの雨傘運動
乱世備忘—僕らの雨傘運動

監督:陳梓桓(チャン・ジーウン)
香港/2016/128 分
“Yellowing” Director:Chan Tze-Woon
Hong Kong/2016/128 min.

名称:山形国際ドキュメンタリー映画祭 2017
会期:10 月 5 日[木]〜12 日[木] 8 日間
会場:山形市中央公民館(アズ七日町)、山形市民会館、
フォーラム山形、山形美術館、とんがりビル KUGURU ほか
http://www.yidff.jp/home.html

各部門別にみると、インターナショナル・コンペティションでは 121 の国と地域から応募された 1,146 本より厳選した 15 作品が上映、日本でもファンの多いベテラン監督から若い世代の監督の個性的な作品が揃いました。アジア千波万波では 63 の国と地域から 645 本の応募があり 21作品が上映、アジア各国の“今”を知ることができる作品が並びました。

また、今年の目玉となりましたアフリカ特集「アフリカを/から観る」では、骨太な現代史ドキュメンタリーでは定評のある監督作品や、若手の作品、そしてナミビアの植民地時代の虐殺をテーマにしたものや、伝統舞踊や音楽を通じて社会の傷を癒すルワンダを追った話題作が揃いました。関連イベントとして開催された「アフリカナイト!」では観客、ゲスト、スタッフ共にアフリカ音楽を味わいつくしました。

「やまがたと映画」と題した特集では故・佐藤真監督特集が組まれ、「あれから 10 年:今、佐藤真が拓く未来~全作上映とトーク」に集まったドキュメンタリーファンの熱心なディスカッションも行われました。

また、「銀幕よ甦れ! やまがた映画館異聞録」では「世界一の映画館」と言われながらも歴史的な大火の火元となった酒田市の伝説的映画館グリーン・ハウスをめぐる上映と展示に加え、脚本家伊藤和典の実家である上山トキワ館にて撮影された押井守監督の実写作品の上映も行われるなど、今はなき山形の二つの映画館についての企画を通し、観客と作品と地域を繋ぐ場所である映画館について思いを馳せる時間となりました。

スイスを代表する映画作家であり、山岳地帯に住む姉弟の悲劇を描いた『山の焚火』が日本でも良く知られているフレディ・M・ムーラー(1940~)監督の特集「共振する身体−フレディ・M・ムーラー特集」では初期の実験映画や、芸術家を対象とするドキュメンタリー作品をまとめて上映。

このような機会は 1986 年にアテネフランセ文化センターが特集上映を組んで以来、30 年ぶりとなりました。ムーラーは、山形で集団的映画製作を続けた小川紳介とも親交があり、山形県牧野村を訪問したこともありました。「山三部作」と呼ばれるムーラ-作品(『われら山人たち』『山の焚火』『緑の山』)があるように、山や辺境に暮らす人々に焦点を当てた二人の映画作家の共通点や相違を見出すことも、同映画祭ならではの目的となった企画でした。

その他にも、アラブに関する映画の特集として 3 回目となる「政治と映画:パレスティナ・レバノン 70s-80s」では、60 年代末にはじまる世界的革命運動/闘争の中で、世界の映画人が、イギリス統治下の 1930 年代にまで遡る「パレスティナ革命」に共鳴して作った「ミリタント映画」を上映しました。

日本の“いま”を独自の視点で捉えたドキュメンタリーを紹介する部門「日本プログラム」では 2015 年の「ヤマガタ・ラフカット!」を経て完成した『かえりみち』の上映も行われるなど、映画祭ならではの継続する出来事も見られました。そして今年の「ヤマガタ・ラフカット!」では日本から2本、アジアから 2 本のラフカットが選出しました。国際交流基金アジアセンターの協力を得て、アジアの監督二人を招待し、対話の場に参加してもらうということも実現しました。

そして、2011 年 3 月 11 日の東日本大震災から生まれた作品を取り上げるプログラムの 4 回目となる「ともにある Cinema with Us」では、記憶の風化と変化への慣れに抗い続けると同時に、この出来事がドキュメンタリーの現在に何をもたらしつつあるのかを問う企画となり、記録と継承の問題についても取り上げました。

クロージング作品として、土本典昭監督の水俣シリーズなど数多くの記録映画のプロデューサーである故高木隆太郎氏の仕事に迫った『表現に力ありや 「水俣」プロデューサー、語る』が上映されました。ほか、沖縄の現在にカメラを向け続け最前線の現実を可視化する三上智恵監督の『標的の島 風かたか』、小川紳介と親交を結び特集でも取り上げたフレディ・M・ムーラーの代表作『山の焚火』、サンティアゴ国際ドキュメンタリー映画祭との友好企画として『盗まれたロダン』が特別上映されました。

各受賞結果

インターナショナル・コンペティション
・ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞) 賞金 200 万円
・山形市長賞(最優秀賞) 賞金 100 万円
・優秀賞(2 作品) 賞金各 30 万円
・特別賞 賞金 30 万円

審査員:イグナシオ・アグエロ(審査員長)
イグナシオ・アグエロ(チリ)、ランジャン・パリット(インド)、
七里圭(日本)、ディナ・ヨルダノヴァ(ブルガリア)

■ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
『オラとニコデムの家』

オラとニコデムの家
オラとニコデムの家

監督:アンナ・ザメツカ
ポーランド/2016/72 分

■山形市長賞(最優秀賞)
『カーキ色の記憶』

カーキ色の記憶
カーキ色の記憶

監督:アルフォーズ・タンジュール
カタール/2016/108 分

■優秀賞
『孤独な存在』

孤独な存在
孤独な存在

監督:沙青(シャー・チン)
中国/2016/77 分

『私はあなたのニグロではない』

私はあなたのニグロではない
私はあなたのニグロではない

監督: ラウル・ペック ※来日なし
アメリカ、フランス、ベルギー、スイス/2016/93

■特別賞
『激情の時』

激情の時
激情の時

監督:ジョアン・モレイラ・サレス
ブラジル/2017/127 分

アジア千波万波

・小川紳介賞 賞金 50 万円
・奨励賞(2 作品) 賞金 各 30 万円
・特別賞(2 作品)
審査員:テディ・コー(フィリピン)、塩崎登史子(日本)

■小川紳介賞
『乱世備忘—僕らの雨傘運動』

乱世備忘—僕らの雨傘運動
乱世備忘—僕らの雨傘運動

監督:陳梓桓(チャン・ジーウン)
香港/2016/128 分

■奨励賞
『人として暮らす』

人として暮らす
人として暮らす

監督:ソン・ユニョク
韓国/2016/69 分

『あまねき調べ』

あまねき調べ
あまねき調べ

監督:アヌシュカ・ミーナークシ、イーシュワル・シュリクマール
インド/2017/83分

■特別賞
『パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ』

パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ
パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ

監督: チョン・ユンソク
韓国/2011/75 分

『翡翠之城 (ひすいのしろ)』
監督:趙德胤(チャオ・ダーイン)
台湾、ミャンマー/2016/99 分

■市民賞(映画祭期間中に募った、観客によるアンケート集計の結果)
『ニッポン国 VS 泉南石綿村』
監督: 原一男
日本/2017/215 分

日本映画監督協会賞
・日本映画監督協会賞 賞金 20 万円

審査員 ジャン・ユンカーマン
ジャン・ユンカーマン(アメリカ)、中村義洋、根来(ねごろ)ゆう、高原秀和

■日本映画監督協会賞
『あまねき調べ』
監督:アヌシュカ・ミーナークシ、イーシュワル・シュリクマール
インド/2017/83分

2017 年全作品の応募状況:128 の国と地域から 1791 本
・インターナショナル・コンペティションのみの応募数:121 の国と地域から 1,146 本
・アジア千波万波のみの応募数:63 の国と地域から 645 本
上映本数:合計 161 本、総来場者数:集計中 ※10/11 時点で 2 万 1 千人を越えている。

http://www.yidff.jp/home.html


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